試験概要・勉強法

司法書士筆記試験の基準点と上乗せ点

基準点

司法書士試験には、「基準点」という足切り点が設定されています。

管理人
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今回は、司法書士試験の基準点のシステムと、合格に必要な上乗せ点について考察します。

基準点とは?仕組みと推移

司法書士試験の筆記試験は、①午前択一式、②午後択一式、③午後記述式の3つの試験があります。

管理人
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②午後択一式と③午後記述式の試験は、午後の部の試験の3時間の中で一緒に実施されますが、それぞれに基準点が設定されているので、これらを2つに分けて、全部で3つの試験としてみていきたいと思います。

基準点とは、いわゆる足切り点のことです。司法書士筆記試験では、上記①②③の合計点が合格点に達していても、①②③のいずれかが基準点を下回っていると合格することができないシステムになっています。

①②③それぞれの直近の基準点は、以下のようになっています。

①午前択一式(全35問/105点満点)
R2 H31 H30 H29 H28 H27 H26
25問 / 75点 25問 / 75点 26問 / 78点 25問 / 75点 25問 / 75点 30問 / 90点 26問 / 78点
②午後択一式(全35問/105点満点)
R2 H31 H30 H29 H28 H27 H26
24問 /72点 22問 / 66点 24問 / 72点 24問 / 72点 24問 / 72点 24問 / 72点 24問 / 72点
③午後記述式(全2問/70点満点)
R2 H31 H30 H29 H28 H27 H26
32.0点 32.5点 37.0点 34.0点 30.5点 36.5点 37.5点

基準点は絶対評価ではなく、相対評価で決められるため、試験の難易度によって毎年変動します。

①午前の部の択一式試験では、平成27年の問題が易しかったため、30問/90点と突出して高くなっていますが、平成27年度を除くと平均して25~26問の間で推移しています。

②午後の部の択一式試験では、平成31年度が難しく、22問/66点でしたが、令和2年・平成30~26年は毎年24問/72点でした。

③午後の部の記述式試験では、30.5点~37.5点の間で推移しています。

上記の基準点から、①②③それぞれの試験でどの程度の得点率で基準点を超えられるかというと、以下のようになります。

  1. 午前択一式:71.4%(25問/75点)~85.7%(30問/90点)
  2. 午後択一式:62.8%(22問/66点)~68.6%(24問/72点)
  3. 午後記述式:43.6%(30.5点)~53.6%(37.5点)

司法書士試験には、基準点を取らないと合格できないので、上の得点率を参考に、まずは基準点を下回らないための勉強をする必要があります。

合格するには基準点+上乗せ点が必要

合格するまでの3つのハードル

司法書士試験の筆記試験では、以下の3つのハードルがあります。

  1. 午前択一式と午後択一式で基準点をとる
  2. 午後記述式で基準点をとる
  3. 総合合格点をとる

午後の記述式試験の答案は、①午前択一式と②午後択一式の両方の基準点を獲得した方のみ採点されます。そのため、まずは午前択一式と午後択一式で基準点をとることが第1のハードルになります。

午前択一式と午後択一式で基準点を獲得し、かつ、午後記述式の試験で基準点を獲得すると、合格する可能性が出てきます。第2のハードルは、午後記述式の試験で基準点を獲得することです。

午前択一式・午後択一式・午後記述式の3つ全ての基準点を獲得し、総合得点が合格点を超えると、合格となります。第3のハードルは、全ての基準点+上乗せ点で総合合格点を獲得することです。

択一式試験で逃げ切り点をとって合格する

管理人
管理人
基準点にプラス何点取れば、合格となるのでしょうか。基準点と合格点の差を見ていきたいと思います。
年度 基準点合計 合格点 基準点と合格点の差
令和2年度 179.0点 205.5点 +26.5点
平成31年度 173.5点 197.0点 +23.5点
平成30年度 187.0点 212.5点 +25.5点
平成29年度 181.0点 207.0点 +26点
平成28年度 177.5点 200.5点 +23点
平成27年度 198.5点 218.0点 +19.5点
平成26年度 187.5点 207.0点 +19.5点

基準点と合格点の差は、年々上昇傾向にあります。

令和2年度では、基準点にプラス26.5点の得点が合格点となっています。択一式の問題が1問3点なので、26.5点とるには、択一式の問題で換算すると9問分(27点)正解することが必要です。

もちろん択一式と記述式の合計得点で26.5点の上乗せ点を獲得しても良いですし、記述式だけで26.5点とってもいいです。

しかし多くの合格者は、午前の部・午後の部の択一式試験で上乗せ点を稼ぎ、記述式試験では基準点を超えるだけで総合合格点に届く得点計画を立てています。

なぜなら、記述式試験は解答例も採点基準も公式な発表がなく、自己採点をするのが難しいからです。自分では高得点をとれたつもりでいても、蓋をあけてみると思ったように得点できていなかったという話もよく聞きます。

択一式試験は、試験の実施日から約1か月後に基準点と正解が法務省のホームページで公開されます。また、択一式試験はマークシート方式のため、自分で選んだ解答がそのまま正誤となり、自己採点しやすくもあります。

午前と午後の択一式試験の両方の上乗せ点で、基準点の合計点と総合合格点との差を埋める点数(平成31年度であれば23.5点)を稼ぐことを、一般的には”逃げ切り点”といいます。逃げ切り点を取ることができれば、あとは記述式試験で基準点をとれれば、晴れて合格となります。

記述式が得意な方は記述式試験で高得点を目指すのも戦略としてありだと思いますが、択一式試験で逃げ切り点を取る方が得点計画を立てやすいので、私は択一式試験で高得点を目指す勉強をするのが良いと思います。

管理人
管理人
択一式と記述式の両方で高得点が獲得できれば良いですが、基準点をとって総合合格点を取れれば合格できるので、満点を目指す勉強をする必要はありません。合格するには、「どこでどれだけ点数を取るのか」自分なりの得点計画を立てることも大切です。

今回は、司法書士試験の基準点のシステムと合格に必要な上乗せ点についてご紹介しました。皆様の試験勉強の参考になりましたら幸いです。