『司法書士 山本浩司のautoma system 不動産登記法 記述式(以下、『オートマ記述不登法』)』を実際に使ってみた感想を書きます。
menu
『オートマ記述不登法』ってどんな問題集?
『オートマ記述不登法』は、TAC/Wセミナー超人気講師”山本浩司”先生のオートマシリーズから発売されている、不動産登記法の記述式対策問題集です。早稲田経営出版から発売されています。
択一式の過去問題集の『オートマ』と同様に、合格に必要な内容のものだけが収録されています(※)。TAC/Wセミナーの受講生のみならず、他の予備校の受講生や、独学者からも人気の問題集です。
『オートマ記述不登法』の特徴
「基本の部」と「応用の部」の2部構成
『オートマ記述不登法』は、「基本の部」と「応用の部」の2部構成になっています。
不動産登記法の記述式問題は、いくつかの”パーツの組み合わせ”で出題されます。ここでいう”パーツ”の王道は雛形ですが、雛形に留まらず、「未成年者や取締役が出てきたら利益相反に注意」とか「代位登記が入っていたら利害関係人の承諾に注意」とか、AがきたらBというような発想も含めて”パーツ”と考えます。
この”パーツ”の組合わせは無限にあるため、その全ての組み合わせをマスターすることは不可能です。しかし、“パーツ”を理解しつくすことで、それが組み合わさった無限のパターンにも対応できる力をつけることができます。
『オートマ記述不登法』の「基本の部」を解くことで、この”パーツ”を完璧に身に着けることができます。
「基本の部」の内容を理解して頭に入れておけば、本試験で十分に戦えます。なので、「応用の部」は、「力試しをしたい」とか「難問に挑戦したい」とかいう理由がなければ、解かなくても合格できると思います。
山本先生も『「応用の部」は、執筆時の私が今より若かったせいか、人智の限りを尽くして作問しており、「ちょっと」、あるいは「かなり」「相当に」、モノによっては「とんでもなく」難しい問題になっています。』と本書の序章に書いています^^;。
小問で構成
『オートマ記述不登法』は、全て小問題で構成されています。
不動産登記法の記述式の過去問を解いたことがある方はご存知だと思いますが、本試験の記述式問題は問題文が長く、別紙も何枚もあるため、1問解くのにとても時間がかかります。1問解くのに凡そ1時間程かかります。
近年の過去問で記述式試験の勉強をしようとすると、1問解くのにとても時間がかかります。答え合わせや解答を読む時間も合わせたら、とんでもなく時間がかかるでしょう。
『オートマ記述不登法』の問題は、とてもシンプルです。冒頭に、数行の「処理対象不動産」「依頼人」「依頼内容」の説明、登記記録、事実関係、問、答案作成上の注意という順に記載されており、ほぼ全ての問題が2ページに収まっています。
「そんなに短い問題で、本当に本試験に対応できる力がつくの?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、十分に力をつけることができます。なぜなら、その短い問題の中に、様々な論点や落とし穴が隠されているので、一個一個丁寧に見ないと完璧に正解することが出来ない内容になっているからです。
『オートマ記述不登法』を解くことで、問題を解く時に必要な、相当の注意力を養うことができます。漫然と問題文を読んで解答していては、正解できないからです。『オートマ記述不登法』は、覚えるために解く問題集ではなく、考え方を身に着けるための問題集であることは、この点からも明らかです。
択一式&雛形の学習を終えてから使う問題集
『オートマ記述不登法』は、択一式の不動産登記法の学習を一通り終えた受験生を対象に執筆されています。また、単なる雛形集ではないので、雛形をある程度覚えてから解くのが効率が良いと思います。
もし、まだ雛形を学習していないという方や、雛形に不安のある方は、同じオートマシリーズに『試験に出るひながた集』というテキストが発売されているので、こちらと併用して記述式対策をするのも一つの方法だと思います。
解説はシンプル、でも詳細
『オートマ記述不登法』の解説ページは、その問題の要点が必要最小限の解説でまとめています。解説ページでは、参考先例や条文、その問題に関する参考情報なども掲載されていますが、解説の分量が適量なので、解説の読み疲れをすることはありません。
また、問題によっては、解説ページに「コラム」が掲載されています。「コラム」とは、例えば、「本試験では、ほとんどの受験生が焦りやプレッシャー、後悔などで、「意識不明状態」に陥る。(中略)「意識不明状態」が避けて通れないのであれば、「意識不明でも正解を書ける訓練」をするべきである。」といったようなことが書かれています。
尚、最新版では、要所において民法改正に関する「コラム」が掲載されています。
答案構成用紙の使い方には言及されていない
記述式試験では「答案構成用紙」が配られます。答案構成用紙は、その問題の事例を時系列で書くなどして、自分なりに解答用紙に書く前に、申請内容を整理して組み立てるために使用します。
『オートマ記述不登法』では、この答案構成用紙の使い方については言及されていません。ただ、『オートマ記述不登法』の問題を解いたり解説を読むことで、問題の解き方や考え方を身に着けることができます。つまりこれは、答案構成用紙を使わずとも、記述式問題を解けるようになるということです。
答案構成の方法を別途学習したいと思った時は、伊藤塾の山村先生の『うかる! 司法書士 記述式 答案構成力 不動産登記 実戦力養成編』というテキストで学習することをおすすめします。山村先生の答案構成の講義は、多くの受験生から支持されています。私も受験生時代に受講しました。
日付記録欄&「基本の部」に解答用紙はない
『オートマ記述不登法』には、いつ学習したかを記録できる日付の記録欄はありません。
また、『オートマ記述不登法』の「基本の部」の問題には、解答用紙はついていません。「基本の部」は小問なので、申請内容を数個書くだけの問題が多いです。いらない紙やチラシの裏に解答を書くことで、特に解答用紙がなくても不便はありません。
山本先生は、「山本浩司の雑談室2」というブログを開設されています。
普段はコメント欄は閉じているのですが、合格発表のタイミングなどで一時的にコメント欄を解放されます。
山本先生へメッセージを伝えたい方は、このタイミングがチャンスですね。
私が『オートマ記述不登法』を選んだ理由&解き方
私が『オートマ記述不登法』を選んだ理由
私は、初めての記述式対策問題集として『オートマ記述不登法』を使っていました。また、合格年にも『オートマ記述不登法』を使っていました。
初めての記述式対策問題集として『オートマ記述不登法』を選んだ理由の一つは、回りの受験生が一番多く使っていた問題集であったので、安心して使うことが出来たことです。多くの受験生に支持されているには、それなりの理由があると思います。択一式と同じ考えで、基本の最小限の知識さえしっかり頭に入っていれば、あとはそれを活用して問題を解けるようになるという点にも共感して選びました。
もう一つは、本屋さんで実物をパラパラと見て、「これなら最後までやりきれそう」と思ったことです。初学者の頃は、「記述式問題は難しい」という情報が先行していたので、「どれほど難しいのだろう」と、記述式試験に対して、やってもいないうちから苦手意識を持っていました笑。でも『オートマ記述不登法』の問題は小問ばかりで構成されているので、ひとつの問題に時間をかけすぎて、うんうん唸って解き切れずに嫌になることはなさそうだと思いました。
合格年に『オートマ記述不登法』を使ったのは、①もう一度、記述式問題を解くための考え方を基礎からやり直したいと思ったのと、②小問で構成されているので、短期間で全問を回すことができると思ったからです。
私の『オートマ記述不登法』の解き方
初学者の頃は、雛形をある程度覚えた後に、『オートマ記述不登法』に取り組みました。まずは雛形を覚えないと、そもそも何を書けばいいのかが分からないと思ったからです。
1日に最低1問解くようにしていました。学習記録を見てみると、本試験までに「基本の部」を5回、「応用の部」を1回解いていました。
『オートマ記述不登法』を選んだ理由は「これなら最後までやりきれそう」だったのですが、実際に解いてみると、短い問題の中に様々な論点があって、落とし穴も沢山あって、地雷を踏んでドツボに嵌って…と、思っていた以上に解くことができませんでした笑。でも、これさえ完璧に出来れば、必ず合格レベルにいけるんだと信じて、諦めることなく解き続けました。
合格年の時は「基本の部」を2回解いて、「応用の部」は一度も解いていません。「基本の部」の内容をマスターすることに重点をおいていたので、「応用の部」は解かないと初めから決めていました。
この年にやっていたのは、問題を何回も解くことよりも、間違えたり理解が不足していた点を強化することでした。自分が書いた解答用紙を全て取っておいて、その解答用紙に、「なぜ間違えたか」や「なぜこうなるのか」といったことをメモしていきました。それを繰り返し見直すことで、次に解く時にはしっかりと理解し、絶対に間違えないという気持ちでいました。
見直しの時間を多くとったのですが、『オートマ記述不登法』の問題は比較的短い時間で解けるのと、「基本の部」は41問と少なかったので、本試験までに2周させることが出来ました。本試験の際に何かをやり残したという感じは全く無かったです。
『オートマ記述不登法』をおすすめしたい方(個人的見解)
『オートマ記述不登法』は、初学者にも学習経験者にもおすすめできる問題集です。
『オートマ』シリーズの全てに言えることかもしれませんが、『オートマ記述不登法』は、少ない知識を完璧にすれば合格できるという思想のもとに作られています。
択一式試験でも記述式試験でも、共通して”基礎が大事”です。『オートマ記述不登法』は、この基礎を”パーツ”と置き換え、そのパーツの組み合わせをすることで、本試験の記述式試験にも対応できる力を養うことができます。
本試験に対応する力をつけることは、初学者であっても学習経験者であっても必要なことです。『オートマ記述不登法』を使いこなすことで、必ず合格レベルに達することができます。
司法書士 山本浩司のautoma system 不動産登記法 記述式 第9版 (W(WASEDA)セミナー 司法書士)