『伊藤塾セレクション 司法書士過去問(以下、『伊藤塾セレクション』)』を実際に使ってみた感想を書きます。
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『伊藤塾セレクション』ってどんな過去問題集?
『伊藤塾セレクション』は、司法試験/予備試験・司法書士試験などの法律系の資格試験予備校大手の伊藤塾から発売されている過去問題集です。
『伊藤塾セレクション』は、全部で4分冊です。「①民法」「②憲法・刑法・民訴法・民執法・民保法・供託法・司書法」「③会社法・商業登記法」「④不動産登記法」に分かれています。
収録されている問題数は、「①民法」と「②憲法他」は全250問、「③会社法他」と「④不動産登記法」は全230問です。
『伊藤塾セレクション』の特徴
合格に必要な全論点を選び抜いて無駄なく収録
『伊藤塾セレクション』は、全4冊合わせても、問題の収録数が1,000問にも達しません。
『伊藤塾セレクション』は、現時点で出題可能性が低くなっているものは収録せず、また、重要なものでも重複して出題されている問題はカットする等しています。その結果、合格に必要な論点を全てカバーしつつも、必要最小量のコンパクトな過去問題集となっています。
問題が厳選して収録されているので、本試験までに何度も繰り返して解きやすく、時間がない受験生が反復学習をするのに適した問題集だと思います。
5肢選択式の問題集
『伊藤塾セレクション』は、5肢選択式の問題集です。本試験の問題と同じく、冒頭に問題文、それに対応する選択肢が5肢ある形式です。
普段から5肢選択式の問題集で過去問を解いていると、その後の答練、模試や本試験問題もスムーズに解くことが出来るようになると思います。
ただ、5肢選択式の問題集は、選択肢に受験生を惑わすためのマニアックな知識が混ざった肢だったり、初学者がまだ学習していない範囲の肢が入っていることが難点でもあります。
この点『伊藤塾セレクション』は、伊藤塾が問題を厳選しているだけあって、マニアックな肢が混ざっているものは少なく、近接した論点の肢が集まった問題を収録しているので、初学者でも解きやすい印象をうけました。
出題年度に関係なくテーマ毎にまとめて収録
『伊藤塾セレクション』は、出題年度に関係なく、テーマ毎にまとめて問題が順番に収録されています。
例えば民法であれば、「総則(人→法人→法律行為→時効)」→「物権(物件総則→占有権→所有権→地上権→不動産賃借権→地役権→用益権全般)」→…、といったような感じです。
初学者であれば予備校の講義で習った範囲、独学者であれば読み込んだテキストの範囲の過去問をまとめて解きたいと思います。学習経験者であれば、満遍なく問題を解くのではなく、あるテーマに絞って復習したい場合が多いと思います。
テーマ毎に問題がまとめられている『伊藤塾セレクション』は、そういったニーズにも対応できる問題集になっています。
ページ右上に問題のレベルが表示
『伊藤塾セレクション』の問題ページの右上には、問題のレベルがA/B/Cの3段階で表示されています。あらかじめ問題の難易度が分かるので、力を入れて解くべき問題なのか否かを把握して解くことができます。
Aランクは基本問題で必ず正解すべき問題、Bランクは応用問題だけど半分以上は正解したい問題、Cランクは、一定の知識があっても解答が困難な問題とされています。
『伊藤塾セレクション』は合格に必要な問題だけを収録しているはずなのに、なぜCランクの問題も収録されているのか?
例えば、『『伊藤塾セレクション(第10版)』の民法では、平成8年第14問「根抵当権」の問題がCランクとして収録されています。問題は、「純粋共同根抵当権については当てはまるが、累積共同根抵当権については当てはまらないものをすべて選んだ組合せを選べ」というものです。
一つ一つの肢の内容は基本的なものが多いですが、純粋と累積の2つのことを判断した上に、解答の組合せが通常の2つ(ex.アエ)ではなく、3つ(ex.アイエ)になっているので、解きにくい問題となっています。
学習した日付を記録できる
『伊藤塾セレクション』の問題ページの右下には、学習した日付が記録できる欄があります。日付を記録することで、復習するインターバルの目安になります。
その問題が正解できたか否か、正誤を記録する欄はありません。
改正法や判例変更に対応
マスターすべき過去問であっても、原文のままでは最新の改正法や判例変更によって表現が不適切な問題になってしまっているものもあります。そういったものには、必要最小限の修正が加えられて、現状にあったものに変更されています。
解説の冒頭にワンポイントアドバイスがある
『伊藤塾セレクション』の解説は、1肢毎の解説にとどまらず、その問題はどういう風にとくのか、また必ず正解すべき問題なのか、近時の傾向等、その問題を通しての解説がされています。
例えば、「各記述とも判例・条文の知識であるため、確実に正解してほしい。」「本問は、法改正(平成16年施行)により改正された知識を初めて本試験において問うた問題であった。今後も出題が予想されるので、しっかり対策をしておくべきである。」といったような解説があります。
私が『伊藤塾セレクション』を選んだ理由&解き方
『伊藤塾セレクション』を選んだ理由
合格した年は実践力を鍛えたかったので、メインの過去問題集として収録問題数が多い『合格ゾーン』を使っていたのですが、サブの過去問題集として『伊藤塾セレクション』を使っていました。
『合格ゾーン』は収録数が多いので様々な問題に触れられるのは良いのですが、それ故基本問題に触れる回数が少なくなり、基礎が疎かになる危惧がありました。そこで基本問題だけが収録されている『伊藤塾セレクション』を並行して解くようにしていました。
自宅で問題を解くときは『合格ゾーン』を、移動時間や仕事の合間に解くときは『伊藤塾セレクション』を、というように使い分けていました。
私の『伊藤塾セレクション』の解き方
『合格ゾーン』は自宅で集中してガッツリ解いていました。『伊藤塾セレクション』は自宅以外でスキマ時間に解く感じだったので、気合いを入れて解いて、そこから理解していくというよりは、基礎知識を確認するために使用していました。
前から順番に解くのではなく、前日に『合格ゾーン』を解いて、もっと解いてみたいと思ったテーマだったり、テキストを読んだ後に過去問を解いてみたいと思ったテーマのところを選んで解いていました。
『伊藤塾セレクション』は5肢選択式の問題集なので、1肢解いて選択肢の組み合わせを見て、消去法で解くような解き方も出来ます。しかし私は5肢全部検討した後に、初めて選択肢の組み合わせを見るようにしていました。そうすることで、1肢1肢きちんと検討して答えを導けるからです。
実践的な解き方は『合格ゾーン』で、知識の確認をするためには『伊藤塾セレクション』、といった感じです。
『伊藤塾セレクション』をおすすめしたい方(個人的見解)
『伊藤塾セレクション』は、基礎を固めたい方で、5肢選択式の過去問題集を使用したい方におすすめの過去問題集です。
本当に合格に必要な論点だけがコンパクトにまとまっているので、『伊藤塾セレクション』を繰り返し解くことで基礎固めをすることができます。
『伊藤塾セレクション』にはAランクの問題が多く収録されているので、初学者でも解きやすい問題集だと思います。学習経験者の中には少し物足りない印象を抱く方もいるかもしれませんが、「『伊藤塾セレクション』は基礎固めをするための問題集」だと決めて使用するには良い問題集だと思います。
基礎固めをするために『オートマ』を使用するのも良いと思います。『オートマ』との大きな違いは、『オートマ』は肢別問題集であるのに対して、『伊藤塾セレクション』は5肢選択式の問題集という点です。
基礎固めをしながら、本試験形式で解きたい方には『伊藤塾セレクション』をおすすめします。
法律系資格試験に強い伊藤塾が編集しているだけあって、収録されている過去問は良問揃いで、解説もとても分かりやすいです。