『司法書士 山本浩司のautoma system 商業登記法 記述式(以下、『オートマ記述商登法』)』を実際に使ってみた感想を書きます。
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『オートマ記述商登法』ってどんな問題集?
『オートマ記述商登法』は、TAC/Wセミナー超人気講師”山本浩司”先生のオートマシリーズの商業登記法の記述式対策問題集です。早稲田経営出版から発売されています。
『オートマ記述商登法』は、「基本編」「応用編」「実践編」の3部構成です。
「基本編」では、比較的易しい問題を解きながら、商業登記法の記述式試験の解き方を学びます。「応用編」では、本試験に対応できるレベルの応用的な問題を解くことで、応用力を養うことができます。「実践編」では、本試験レベルの問題を解いて、実践力を鍛えることができます。
『オートマ記述商登法』の特徴
「基本編」「応用編」「実践編」の3部構成
先に述べましたが、『オートマ記述商登法』は、「基本編」「応用編」「実践編」の3部構成になっています。
商業登記法の記述式問題は、不動産登記法の記述式問題と同様に、いくつかの”パーツの組み合わせ”で出題されます。
“パーツ”とは、雛形(=解答するのに覚えておくべき「登記の事由・登記すべき事項・課税標準金額/登録免許税額・添付書面の基本セット」)に加えて、「取締役会が廃止されたら会社を代表しない取締役に代表権が付与されるので、代表権付与の登記申請が必要」といったように、「Aが起きたらBを発想する」といった「連想」も含みます。
「基本編」の問題を解くことで、この”パーツ”を身に着けることができます。
「基本編」はその名の通り、記述式問題を解くための基本を学びますが、「応用編」では、「基本編」で学んだことをベースにして、少し複雑な応用問題を解くことで、本試験に対応できるだけの力を養います。
「実践編」では、本試験とほぼ同様のレベル・構成の問題が出題されるので、これまで「基本編」と「応用編」で学んだことの総仕上げができます。
本試験の第1欄の解答量相当の問題で構成
これも私の個人的な印象ですが、『オートマ記述商登法』は、本試験の第1欄の解答量相当の問題で構成されています。平成30年度の本試験の第1欄では、「会社継続」「取締役、代表取締役及び監査役の変更」「支配人の選任」「取締役会設置会社の定め設定」「監査役会設置会社の定め設定」といった5つの登記の事由が出題されました。多少の増減はあるものの、概ね第1欄相当の問題を解くイメージでいて間違いはないと思います。
「基本編」といえども、相当な注意力を持って解かないと完答することはできません。商業登記法の記述式問題は、何かひとつでも問題文の記載を見落としてしまうと、連鎖的にその後の論点で失点していきます。「応用編」は、「基本編」よりもさらに解答量が増します。
『オートマ記述商登法』で本試験の第1欄の解答量弱の問題を解いて、雛形を確認したり、連鎖的発想力を養えたりすることと同時に、相当の注意力を養うことができます。
択一式&雛形の学習を終えてから使う問題集
『オートマ記述商登法』は、択一式の会社法&商業登記法の学習と、商登記述の雛形を一通り覚えた後に解くのが良いと思います。
記述の問題を解く際には、解答するための武器(=会社法&商業登記法の知識や雛形の記憶)が必要です。武器をもたずに闘ってしまったら、木っ端みじんに打ちのめされるかもしれません。。。
択一式の知識が頭に入っていないと、解答するための思考が出来ないので記述式問題を解くことは出来ません。また、雛形を覚えていないと、思考が出来たとしても、解答欄に解答を記載することができません。
もし、まだ雛形を学習していないという方や、雛形に不安のある方は、同じオートマシリーズに『試験に出るひながた集』というテキストが発売されているので、こちらと併用して記述式対策をするのも一つの方法だと思います。
ポイントを分かりやすく解説
『オートマ記述商登法』の解説は、他の『オートマ』シリーズと同様に、とてもシンプルです。はじめに、問題のキモである”パーツ”の組み合わせの解説があります。その後に単発の論点の解説が記載されています。
要点がコンパクトにまとめられているので、とても読みやすく理解しやすいです。コンパクトな解説の中に、参考条文や先例も記載されているので、他に条文を引いたり先例を調べたりする必要はありません。
答案構成用紙の使い方には言及されていない
『オートマ記述不登法』と同様に、答案構成用紙の使い方については言及されていません。
ただし、解説ページで役員の就任・退任/辞任等による役員の任期を、時系列で表す図で解説されています。恐らく、多くの方が商業登記法の答案構成用紙に書くのは、決議事項と役員の就退任状況だと思います。
解説ページの図を参考にすることで、答案構成用紙に役員の就退任状況の書き方を習得することは可能だと思います。
答案構成の方法を別途学習したいと思った時は、伊藤塾の山村先生の『うかる! 司法書士 記述式 答案構成力 商業登記 実戦力養成編』というテキストで学習することをおすすめします。山村先生の答案構成の講義は、多くの受験生から支持されています。私も受験生時代に受講しました。
日付記録欄&「基本編」「応用編」に答案用紙はない
『オートマ記述商登法』には、いつ学習したかを記録できる日付の記録欄はありません。
また、『オートマ記述不登法』の「基本編」「応用編」の問題には、答案用紙はついていません。ただ、商業登記法の記述式問題は、概ね「登記の事由」「登記すべき事項」「課税標準額」「登録免許税」「添付書面の名称及び必要な通数」(+「登記できない事項」)を解答することが多いので、特に答案用紙が付いていなくても問題ないかと思います。
「実践編」には答案用紙がついていますが、記載欄が小さいので拡大コピーするなどして使わないといけないです^^;。
私が受験生の時に、周りの受験生が一番多く使っていた記述式問題集が『オートマ』シリーズでした。
周りの受験生と同じものを使っていることで、分からないところを聞けたり、進捗状況を共有して切磋琢磨できるので良かったです(^^)
私が『オートマ記述商登法』を選んだ理由&解き方
私が『オートマ記述商登法』を選んだ理由
私は、初めての記述式対策問題集として『オートマ記述商登法』を使っていました。また、合格年にも『オートマ記述商登法』を使っていました。
初めての商業登記法の記述式対策問題集として『オートマ記述商登法』を選んだ理由は、それまでに『オートマ記述不登法』で不動産登記法の記述対策をしていて、『オートマ記述不登法』が良かったので、その流れで商業登記もオートマにしたというのが実際のところです。
その後、『オートマ記述商登法』は使わず、予備校の記述式対策の教材を使って受験した年もありましたが、合格年は、再び『オートマ記述商登法』を使用しました。
合格年に『オートマ記述商登法』を使ったのは、”注意力”を伸ばしたかったからです。私は問題の読み落としをすることが多く、注意力が足りないと感じていました。『オートマ記述商登法』の問題は、漫然と問題文を読んでいては解答できない問題ばかりです。
もう一度『オートマ記述商登法』の問題を解くことで、本試験でも対応できるだけの注意力を身に着けようと思い、選びました。
私の『オートマ記述商登法』の解き方
『オートマ記述商登法』を初めて解いたのは、予備校の商業登記法の講義が終わり、演習講義が終わる頃の3月1日からです。学習記録を見てみると、本試験までに「基本編」を2回、「応用編」「実践編」を1回解いていました。
合格年の時は「基本編」「応用編」「実践編」の全ての問題を2回解きました。学習記録によると、「実践編」の最後の問題を解いたのが6月24日だったので、本試験直前まで『オートマ記述商登法』の問題を解いていたことになります。
問題を解いた回数は、初年度と変わりません。しかし、初年度の時は時間が足りなくて1~2回しか解けなかったのですが、合格年は、計画的に2回だけ解くと決めていた点が大きく違っています。
合格年はそれまでの積み重ねで基礎力がついていたことと、問題を解く勘どころがなんとなく分かっていたので、何度も問題を繰り返し解くよりは、間違えたところの見直しに力を入れる方が、実力をアップできると思ったからです。
見直しの方法は、不動産登記法と同じで、自分が書いた答案用紙を全て取っておいて、その答案用紙に、「なぜ間違えたか」や「なぜこうなるのか」といったことをメモしていきました。それを繰り返し見直すことで、自分の間違った思考回路を正していきました。
『オートマ記述商登法』をおすすめしたい方(個人的見解)
『オートマ記述商登法』は、初学者にもおすすめですが、学習経験者にも使って頂きたい問題集です。
初学者にとって、記述式問題は未知のものだと思います。『オートマ記述商登法』は、「基本編」から本試験の問題をコンパクトにしたような問題形式で出題されます。普段から『オートマ記述商登法』の問題を解いておくことで、スムーズに本試験レベルの問題へ対応できるようになると思います。
また、不動産登記法と同じく、本試験問題を解くときに必要な”パーツ”を身に着けることができます。この”パーツ”をどのように組み合わせて解答していくかといった解法も習得できるので、記述式問題の解法が定まっていない方にもおすすめです。
これは本当に私の個人的な感想ですが、他のオートマシリーズが基礎問題で構成されているのに比べて、『オートマ記述商登法』の問題は、「基礎編」であっても骨のある問題が多い印象があります。学習経験者が解いても、簡単すぎるといった問題は少ないと思います。
私が受験生の頃、学習経験者が「オートマの問題は登記できない事項が多く出るけど、本試験ではそんなに登記できない事項は出ないし、オートマを解く意味ってあまりない。」みたいなことを言っているのを聞いたことがあります。おそらく、商業登記法は「書けるところから書く」みたいな傾向があるので、とりあえず登記できない事項は考えずに答案用紙に書いていくといった発想からきているのだと思います。
確かに登記できない事項を書かせる問題が多いかもしれません。しかし『オートマ記述商登法』が登記できない事項を書かせたい意図は、登記できない事項そのものを書かせたいのではなく、それに「気付けるだけの注意力」だったり「なぜこの問題では登記できないのか」を考える力を養うためだと思います。
基礎が身についている学習経験者は、あとはその知識を本試験の極限状態でも焦ることなく発揮するだけです。そのためには、普段から注意力や連想力・思考力を鍛えられる『オートマ記述商登法』の問題を解くことをおすすめします。
司法書士 山本浩司のautoma system 商業登記法 記述式 第7版 (W(WASEDA)セミナー 司法書士)